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自己啓発本の森を歩く〜カーネギーを超える本はあるのか??〜

同じような自己啓発本がなぜ多いのか?自己啓発本は何を教えてくれるのか?自己啓発本はなぜ売れるのか?なぜ自己啓発本の内容を実践できないのか?自己啓発本を読みながら考える

ポジティブ思考かネガティヴ思考かはどこまで気にすべきか?

 

相原孝夫『ハイパフォーマー彼らの法則』日本経済新聞出版社、2014年

今回読んだのはこちら。

 

ハイパフォーマー 彼らの法則 (日経プレミアシリーズ)
 

 

一言で言えば、時間が有り余っているのであれば、読んでもいいのではないでしょうか、といったところでした。

 

本書の目次は以下のとおり。

 

第1章 前向きなあの人が、なぜ結果を残せないのか

第2章 良くも、悪くも、すべては循環する

第3章 期待の新人は、なぜ「平凡な社員」になったのか

第4章 失敗から学ぶ彼らにとって、仕事は「ゲーム」だ

第5章 彼らは、とにかく「小さな行動」を続ける

第6章 彼らは身近な人を支援し、成功を助ける

第7章 彼らは、たまたまの成果を喜ばない

第8章 彼rは、環境が変わっても瞬時に溶け込む

終章 職業人生を終える時、どういう思いを持ちたいか 

 

ここでは、本書全体というよりも、「ポジティブ思考」の良し悪しを少し考えてみたいと思います。

 

ポジティブ思考の良し悪し

「ポジティブ思考」は必ずしも良くないとする点が筆者としてのオリジナリティの一つなのだと思います。

 

まず誰もが思い浮かぶのは、世の中に数多く流布している「成功法則」の類ではないだろうか。成功するための法則であるから、それに適った行動をとれば、好循環に入ることができ、成功に至るはずと普通は考える。

しかし、本当にそうであろうか。成功法則の中で最も多く言われていることの一つは、間違いなく「ポジティブ思考」であろう。

(中略)

しかし、様々な事象を見てみると、ポジティブ思考が必ず良い結果を招き寄せるとは限らないことが分かる。

よく指摘される点としては、失敗した時の受け止め方にポジティブ思考の人とネガティブ思考の人の差が表れるという点がある。

「あの時、別の方法を採っていたらどうなったいただろう?」という、「もし〜だったら・・・」式の考え方、心理学で言うところの「反事実的思考」をポジティブ思考の人はしたがらない。

ネガティブ思考の人は

「もし別の方法を採っていたら、うまくいっていたかもしれない」と考える。この考えは次回への教訓となるため、次のいい結果をもたらす可能性が高まる。ポジティブ思考の人は、「今回採った方法が最善であったに違いない」と考えてやり過ごす。こうした考えは、あまり落ち込まずにすむという点においては有効だが、物事を改善し、次回以降のパフォーマンスを高めたい場合にはあまり役には立たない(25-26ページ)

 

本書を通して思うのは、筆者のポジティブ思考への偏った見方。

 

たとえば、上記の一例はポジティブな人というよりは、単に思慮の浅い人ではないでしょうか。筆者のポジティブ思考の理解の仕方がやや表面的というか意図的にポジティブ思考を過小評価しているように感じられます。

失敗したり叱られたりしても、そこから学べることもあるさ、と考えることをポジティブ思考と捉える人も多いはずです。とすると、そもそも筆者のポジティブ思考の定義自体がやや恣意的というか、すなわち、批判しやすくポジティブ思考を自分なりに定義しやすくしてしまっているように感じます。ポジティブ思考を自分で批判しやすく加工しておいて、それでポジティブ思考はよくないというのはややマッチポンプ的というものでしょう。

 

そもそも、ポジティブ思考をどう定義すればよいのでしょうか。さらに言えばポジティブ思考かネガティヴ思考かはどこまで重要な要素といえるのでしょうか?

 

たとえば本書だと、93ページにポジティブ思考の人は「ポジティブ思考を励行している人などは、「失敗は誰にでもある。早く忘れてすっきり切り替えよう」と思う」人とあります。他方、ハイパフォーマーは失敗から学ぼうとし、経験重視で成長志向であると筆者はいいます。

ここでふと思うのは、他の本だと失敗から学ぼうとするのはポジティブ思考の一つとされることもあるということです。普通であれば失敗して落ち込むところ、失敗から得られることがあると考えたら、それゆえ失敗をむやみに恐れないというのはポジティブ思考ともいえます。

 

さらに筆者はあるアメリカのジャーナリストの著書を引用して、アメリカはポジティブ病と筆者は言って、ポジティブ思考のマイナス面を強調します。

 

ポジティブな思想が社会に深く根付いているにもかかわらず、アメリカの状況、特に経済・労働環境は悪化の一途を辿っている。それはなぜか。「現実を直視しない、直視させない、そういった安易な楽観主義、ポジティブなものの考え方の蔓延こそが、アメリカのビジネスを凋落させ、個人の経済格差をいっそう広めてきた」とエーレンライクは言う(34-35ページ)

 

確かにそういう一面はあるのでしょう。しかし、本書がハイパフォーマーの話をしている以上、パフォーマンスという観点からポジティブ思考がいかに影響するかという視点から分析する必要があるでしょう。そして、そうした場合、果たして本当にポジティブ思考が筆者が主張するようによくないものなのか、疑問が湧いてきます。

 

というのも、経済開発協力機構(OECD)の統計では日本の生産性はアメリカの6割程度にとどまるわけで、結局のところ、社会全体としてみれば、ポジティブなほうがハイパフォーマンスともいえそうだからです。

 

Productivity statistics - OECD

 

こうしたデータを踏まえると、結局のところポジティブ思考な国、アメリカの方がいいといえます。筆者が

 

行動の原動力という意味において、ポジティブ思考かネガティブ思考かは重要なポイントなのか?

 本書の第5章では行動することが大事と説かれています。これはとても大事でしょう。行動すれば何かしらの結果が得られ、その結果を土台にさらに先に進めます。行動+経験にまさるものはないでしょう。当然、行動すれば失敗という結果が出ることもあるでしょうから、失敗を想像すれば行動する気が萎えてしまう場合もあるでしょうが。

 

本書ではネガティヴ思考がなぜ失敗したのかという原因分析に向かわさせ、次の改善につながると言います。ポジティブ思考だと失敗を気にしないので原因を深く探索しないと。

 

しかし、行動することが大事といった場合、その原動力がポジティブ思考なのかネガティヴ思考なのかはそこまで重要ではないのではないという気がしてきます。どういう動機であれ、行動し、経験し、結果を振り返ればいいわけで、ポジティブ思考で失敗からも学べることもあるさ〜と明るく原因分析をするか、次の失敗を回避したいがために原因分析をするかはさほど大きな違いがないというか、もはやどちらでもいいと思うのです。

だから、本書で随所にポジティブ思考が批判されていますが、われわれにとってはポジティブ思考かネガティヴ思考には拘泥せずに何はともあれ行動してみるかという理解で十分と思われます。

 

もしポジティブ思考かネガティヴ思考かで原因分析の質に大きな差が生じるのだとしたら、この違いは重要ですが、本書ではそこらへんは掘り下げておりません。 

しかし、たとえ原因分析の結果に差がなかったとしても、われわれの気持ちのあり方には大きな差をもたらします。仮にネガティヴ思考で十分に高いパフォーマンスがすでに上がっているのだとしても、ネガティヴ思考から生じる心理的なストレスこそ実はなんとかならないか、と多くの人が思ってるんですよね(笑)

 

ネガティヴ思考の人が、ネガティヴ思考だとメンタル的にツライと誰かに相談したとき、ネガティヴ思考だといろいろ考えるからいい結果につながるからいいことじゃん!と言われてもあまり慰められた感じがしないこともしばしばです。

 

パフォーマンスかどうかも重要ですが、パフォーマンスに至るまでのメンタル的なストレスを何とかしたいと思ってる人も多いではないでしょうか?

 

その回答は現在持ち合わせていませんが、とりあえずはポジティブ思考かネガティヴ思考は実はさほど大きな意味はないかもしれないということにしておきましょう。